【最新の研究結果から考える】加齢に伴い必要エネルギー量は変動する?
国立・栄養研究所の研究チームから、総エネルギー消費量に関する研究報告が示されました。総エネルギー消費量の絶対値は10代後半で最も高く、その後はわずかに低下するも60代までは一定の値を示すというものです。ではなぜ加齢とともに、体重が増えてしまうのでしょうか。今回は管理栄養士の視点で、体重コントロールのコツを紹介します。
2022年12月22日
1日に必要なエネルギー量は加齢に伴い変化する?
中年期、代謝の減速はわずか0.7%
国立・栄養研究所の研究チームは、ヒトの生涯にわたる1日の総エネルギー消費量について分析を行いました。 体格調整した時に、総エネルギー消費量が最も高かったのは乳児でした。乳児は、生後12か月の間で総エネルギー消費量は急増していきます。1歳の誕生日には、大人より50%も速くエネルギーを消費していたいのです。この時期は、十分な栄養を補う必要があると言えるでしょう。 総エネルギー消費量の絶対値としては、10代後半が最も高く、その後はわずかに低下したのち、60代までは一定の値を示していました。中年期における代謝の減速は、わずか1年で0.7%と穏やかです。研究チームでは、中年太りを考えると予想外の減少にみえるかもしれないと述べています。 一方で90代の人は、中年の人よりも1日あたりの必要エネルギーが26%少なくなっています。
エネルギー消費量は大きく3つ
基礎代謝量
エネルギー消費の1つは、基礎代謝量です。基礎代謝量は、筋肉量の変化などによって10代後半をピークに下がっていくことが知られています。 50kgを維持している女性の場合、基礎代謝量は20代の時には1105kcal程度だったところが、30代以降になると1095kcalとなります。わずか1日あたり10kcalの低下です。この差は年間にすると体重0.5kg相当です。50代以降になると基礎代謝量は1035kcalまで低下し、20代の頃との差は70kcalに広がります。1年間の体重に換算すると3.5kg程度になるのです。 基礎代謝は、1日のエネルギー消費量のうち、60%を占めており、体格に依存しています。この基礎代謝は筋肉で約22%、肝臓で約21%、脳で約20%を占めています。適度な運動によって筋肉量を維持することや、お酒の飲み過ぎ、油っこいもの摂り過ぎに気をつけて肝臓を労わることが基礎代謝の低下を防ぐことになるといえるでしょう。
食事誘導性熱産生
エネルギー消費量の2つ目は、食事を摂ることによって発生する食事誘導性熱産生です。1日のエネルギー消費量のうち、約10%を占めています。きちんと食べることもエネルギー消費につながります。
身体活動量
エネルギー消費の3つ目は、身体活動量です。1日のエネルギー消費のうち、約30%を占めています。 身体活動量は大きく2つに分けられ、家事などの日常生活活動によるものと、意図的な運動によるものです。日常生活活動の個人差は大きく、一般的な体格の方と肥満がある方の座っている時間の平均差は約164分というデーターがあります。立っているか、座っているかエネルギー消費量は1.8倍違います。スタートは同じ体重でも、座っている時間が長くなるほどエネルギー消費量は減り、徐々に体重の増加につながってしまうのです。日々の活動量を高めることも大切なことと言えるでしょう。
まとめ
日々の積み重ねが体重コントロールの秘訣
生涯でみると、必要なエネルギー量はダイナミックに変動していきます。 乳児~10代後半にかけては多くのエネルギー量を必要とし、その後は身体の変化に応じて必要なエネルギー量は変わっていきます。1日に必要なエネルギー量は、18~29歳で1700~2300kcal、30~49歳で1750~2350kcal、50~64歳で1650~2250kcal程度です。同年代でも、身長や活動量に応じて食事量をコントロールする必要があるため、必要エネルギー量には変動幅があります。 理想の体重をコントロールするためには、必要な食事量を確保しながら、適度に身体を動かすことが大切です。在宅ワークや外出自粛が続く今だからこそ、日々の活動量アップを意識していきましょう。 【参考文献】 ・LINKdeDIET 世界の最新健康・栄養ニュース/運動/1日に必要なエネルギーは加齢に伴いダイナミックに変動する(https://www.nibiohn.go.jp/eiken/linkdediet/news/FMPro%3F-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=75843&-lay=lay&-Find.html)閲覧日:2021年9月20日 ・厚生労働省/e-ヘルスネット/身体活動・運動/エネルギー代謝の仕組み/加齢とエネルギー代謝(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html)閲覧日:2021年9月20日 ・厚生労働省/e-ヘルスネット/身体活動・運動/エネルギー代謝の仕組み/身体活動とエネルギー代謝(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-003.html)閲覧日:2021年9月20日 ・伊藤貞嘉、佐々木敏監修「日本人の食事摂取基準2020年版」第一出版,2020年
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著者
酒井 葉子(管理栄養士、東京糖尿病療養指導士)
幼少期にアトピー性皮膚炎で悩み、身体の内側から見直す必要性を感じて管理栄養士に。大学卒業後は、給食管理業務や医療機関での栄養指導に携わり、現在は保健指導やコラムの執筆に従事。食を通して、充実した毎日のサポートを行ってまいります。