【気になる研究結果】食物繊維「プレバイオティクス」で睡眠の質が改善するかも?
食物繊維が、私たちの腸内環境に良い影響を与えることは広く知られていますよね。それだけでなく、2020年にコロラド大学にて行われた研究において、プレバイオティクスとよばれる一部の食物繊維が、睡眠を改善し、そしてストレス回復力を高める、という報告がありました。今回は、この研究について詳しく見ていきましょう。
2022年10月24日
どんな研究が行われた?
プレバイオティクスって何?
プレバイオティクスとは、大腸内にいる特定の細菌の増殖、そして活性を、選択的に変化させることで宿主(その菌が寄生している生物)に良い影響を与え、健康を改善するはたらきが期待できる難消化性食品成分のことをいいます。オリゴ糖や、一部の食物繊維などがこれにあたります。 全ての食物繊維があてはまるわけではありませんが、セイヨウネギやアーティチョーク、玉ねぎ、そして特定の全粒穀物など、繊維質の多くの食品にプレバイオティクスは豊富に含まれています。
今回の研究の目的は?
腸内の食物繊維が、消化系に良い影響を与えるということはすでに広く知られています。 しかし今回ご紹介するのは、食物繊維が腸内環境だけでなく、私たちの「脳」と「行動」にも大きな影響を与えているのではないか、ということを調べた研究です。
研究方法は?
コロラド大学にて行われたこちらの実験では、若い雄のラットを用いています。まずはラットを2群に分け、標準的な餌、またはプレバイオティクスを混ぜた餌のいずれかを与えました。そして、ラットにストレスをかけ、その前後に一連の生理学的測定値を追跡しました。
研究結果は?
どんなことがわかった?
プレバイオティクスを混ぜた餌を与えたラットでは、ノンレム睡眠(深い眠り)の時間がより長くなりました。また、ストレスを与えた後には、ストレスからの回復の際に不可欠である、レム睡眠(浅い眠り)の時間がより長くなるという結果になったのです。 また、標準的な餌を与えたラットでは、体温の変動が不自然に平坦化しました。さらにストレス後には、腸内の微生物叢において多様性の低下がみられました。反対に、プレバイオティクスを混ぜた餌を与えたラットでは、これらの悪影響は緩和されていたのです。 さらに測定を行っていくと、標準的な餌を与えたラットでは、睡眠障害を引き起こす可能性のある代謝物が顕著に上昇しましたが、プレバイオティクスを混ぜた餌を与えたラットには、そのような現象は認められませんでした。 以上のことから、「プレバイオティクス」と呼ばれる特定の食物繊維が、腸内細菌とそれらが生成する代謝物に影響を与え、睡眠を改善しストレス回復力を高めることができる、ということがわかりました。
まとめ
これからの研究に期待!
今回の実験では、非常に高容量のプレバイオティクスを用いており、そして人間ではなくラットを対象としています。そのため、人間がプレバイオティクスの豊富な食品を摂取するだけで、今回行われた実験の結果のように良い睡眠を得られるのかどうかは不明です。 ただ、研究者らは今回の知見から、ストレスを緩和するための物質を増強し、睡眠妨害をする物質を抑制するような治療薬の開発につながっていくのではと期待を寄せています。今後さらなる研究が行われ、人間にも効果の期待できる発見が報告される日が楽しみですね。 【参考文献】 Link de Diet/ニュース詳細/プレバイオティクスと睡眠の質 https://www.nibiohn.go.jp/eiken/linkdediet/news/FMPro%3F-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=69808&-lay=lay&-Find.html (2020.7.14閲覧)
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著者
谷口 美希(管理栄養士)
食べることと料理が大好きで、大学で栄養学を学ぶ。卒業後は管理栄養士として老人ホームや健診センターに勤務。現在は、特定保健指導やオンラインでの栄養指導、コラムの執筆などに携わっており、栄養の面からたくさんの方の健康を支えていくことを目指しています。